LLamaCon Japan 2019 レポート

【協賛企業】

プラチナスポンサー: 株式会社野村総合研究所

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LLamasoftは、去る2019年10月10日に『LLamaCon Japan 2019』を開催いたしました。LLamaCon Japanは、サプライチェーンをテーマにしたLLamasoftが主催するカンファレンスです。

LLamaCon Japan 2019では、LLamasoft Inc.のカスタマーサクセス部門シニアバイスプレジデントのカルロス・バルデラマが来日し基調講演を行ったほか、日立物流やPepsiCoといった先進的サプライチェーンを誇るグローバル企業をゲストスピーカーに迎え国内外の成功事例やベストプラクティスをご覧いただきました。

多数の方にご参加いただき誠にありがとうございました。


【メイン・カンファレンス】


LLamasoft基調講演
(LLamasoft Inc.   カルロス・バルデラマ)

基調講演では、サプライチェーンにおける堅牢かつ優れた意思決定への必要性がますます高まっていることを受け、データを元にした意思決定の重要性を説きました。


変化のスピードの加速
近年の加速する市場内外の変化により不確実性が高まっています。サプライチェーンも高いプレッシャーを受け、意思決定がますます難しくなっています。企業内では、調達、製造、保管、輸送といった部門毎にプロセスを構築してきましたが、一方で部門間でのコミュニケーションや協調レベルは決して高くありません。戦略、戦術的計画 運用計画がうまく組み合わさってサプライチェーンを素早く回すことで、変化への対応が可能になります。また、短期間での意思決定が重要となるなか、どういったポリシーを使ってサプライチェーンを動かすのか、参照用サプライチェーン・システムを活用したサプライチェーン意思決定を行うことが大切です。


LLamasoft ビジョン

LLamasoft では、サプライチェーンの中のサイロ化を打ち破り、各部門を繋ぎ、関係者が組織全体に渡ってトレードオフを分析し、メリットのある形でサプライチェーンを回していくことを可能にします。戦略立案から計画・実行するまでの時間をより迅速にし、結果を出すまでの時間を短くしていきます。分析機能を一部の人に限定するのではなく、より多くの人が活用して意思決定に活かせるようにしていく。LLamasoftは、従来のパッケージアプリケーションで対応が困難な、企業の新しいニーズ・課題に対して素早く柔軟に変更・対応できるよう開発を進めていきます。


LLamasoft ミッション
情報に基づくスマートな意思決定を支援することで、人々の生活と組織の状況をよりよくしていくことをLLamasoftはミッションとしています。サプライチェーンを通して、モノを作る人と必要としている人、さらにシステム・プロセスを繋ぎ、データに基づくスマートな意思決定を可能にすることで、人々の生活がより良いものとなるよう貢献していきます。


ゲスト講演:『 物流は新領域へ ~ Supply Chain Guru Xで複数顧客のネットワークを束ねて全体最適に挑戦 』

株式会社日立物流 | 西川貴裕 氏

1950年に創業した日立物流は、国内外合わせて740拠点、16,000台以上の車両を保有する3PL事業を中心に多岐にわたってビジネス展開している企業です。自動化、可視化、最適化の観点からスマートロジスティクスを推進し、近年ではパートナーとの協創のもとサプライチェーンデザイン力強化、倉庫・輸送プラットフォームの構築を通じてビジネスや社会課題の解決を目指しています。このセッションでは、2018年度に行った効果検証プロジェクトについて、また、日立物流としてサプライチェーンデザインをどのように活用していくかについてご紹介くださいました。

近年、市場環境に適応するために、従来の見積り型提案営業から顧客との対話を基にした課題解決型営業にシフトしてきた日立物流。2018年からは自社開発ツールで対応できる以上に複雑な課題を取り扱うため、LLamasoft と連携することにしました。その結果、出荷拠点の数・立地、配送エリア、配送経路、トンキロ、物流コストだけでなく、LLamasoftソリューションを使うことにより、多段階における物流拠点の数・立地・機能、拠点毎の幹線輸送ルート・手段、拠点毎の在庫、車両リソースの配置を考慮したうえでの在庫金額、サービスレベル、関税・為替コストなどを評価したり、クロスボーダー、マルチピック・マルチドロップ、車両リソースの最適配置の検証することが可能になりました。国内だけでなくグローバルな地域にも幅広く多軸評価ができるように拡張するとともに、リソースを最大活用できるよう、戦略・戦術の両面から課題解決力を強化していると言います。

セッションでは、2018年に行ったプロジェクトをご紹介いただきました。LLamasoftからのコーチングを活用しつつ、複数拠点・顧客(4社)での車両リソースのシェアリングについて検証しました。最適化評価では、ドライバー拘束時間、休憩時間を考慮したり、納品可能な車両条件、納品時間枠、車両割り当て輸送順位を制約として組み込みつつ、会社ごとに輸送ルートを最適化、車両リソースを自由に組み替えしたり、会社間の輸送ルートを自由に組み替えするような複数のシナリオを作成して評価しました。プロジェクトの結果、4社のリソースをシェアリングした場合、車両台数は16%の削減機会を特定することができたと言います。今後も更なるデジタル化を進め、物流デジタルトランスフォーメーション(DX)とサプライチェーンデザイン能力を強化することを通じて社会課題の解決を目指すということでした(SCDOS Web, PDF)。



『LLamasoft Supply Chain Design & Digital Decision Making 
ソリューションアップデート 』
LLamasoft株式会社 | 村儀 実

ビジネス競争戦略に対してサプライチェーン戦略と施策を連動させることで、企業のイノベーションを促進することができます。企業が市場で競争優位性を維持するためには、サプライチェーンに関する意思決定が非常に大きな役割を占めることになります。

企業が直面する複雑かつ常に変動するサプライチェーンの課題に対応するために、LLamasoftは20年に渡るサプライチェーン専門知識と経験をもとに、デジタルツインの構築を迅速かつ簡単に行い、企業がスマートな意思決定することを可能にするプラットフォーム「Digital Design & Decision Center」を開発しています。この開発中プラットフォームでは、サプライチェーンモデル構築、シナリオ構築、シナリオ結果分析、需要モデル化するだけではなく、現状のサプライチェーン・パフォーマンスの分析や潜在的問題・脅威を特定する可視化できたり、さらに関係者との連携を促進し、戦略・戦術・運用といった複数のサプライチェーン・ファンクションに跨った意思決定を可能にするマイクロアプリを構築・展開することが可能になります。

デモンストレーションでは、開発中のプラットフォームを通じて提供を予定しているApp Builderのテクニカルプレビューもご覧いただきました。



スポンサー講演: 『サプライチェーンデザイン(設計系)は、誰がどう担うべきか ~日本企業の成功/課題事例からの示唆 』
株式会社野村総合研究所| 中川 宏之 氏

サプライチェーン最適化領域において数々の実績と経験豊富な人材を持つ株式会社野村総合研究所の中川宏之氏よりセッションを頂戴しました。

中川氏は、設計系(デザイン)、計画系、実行系の三層構造を成すサプライチェーンマネジメントの中でも、デザインはサプライチェーンの「エンジン」としての大事な役割を果たすこと、さらに、サプライチェーンにおける全体最適化問題は複数の目的関数や複雑な制約を含むため非常に高度であり、デザイン特化ソリューションでないと解くことが難しいと包括的に解説くださいました。

サプライチェーン・プロジェクトで大事なことは、データです。モデル作業の8割、品質の9割はデータ加工処理作業に関係するといわれ、データ処理はアウトプットに合わせ丁寧に行わなくてはなりません。中川氏は野村総合研究所が培ったノウハウと共に、データ加工の大切さをご説明くださいました。最後に、日本企業でのサプライチェーンデザインの導入状況、その課題、さらにサプライチェーンを企業の強みとする継続的デザインの必要性を語っていただきました。



『LLamasoftソリューションのケイパビリティとその効果 ~ Brand-New Case Study Session 』
LLamasoft株式会社 | 松田 薫

LLamasoftサプライチェーンデザイン・ソリューションは、部門毎の特定用途に限定した小規模な最適化プロジェクトから、部門間を超えたビジネス全体に渡るエンドツーエンド(E2E)のサプライチェーン最適化プロジェクトまで、ビジネスニーズに合わせて幅広い用途に柔軟に運用することができます。

このセッションでは、750社を超える革新的なグローバル企業の3,000を超えるサプライチェーンプロジェクトを支えてきたLLamaosftの実績から、アメリカ空軍航空機同軍団(United States Air force – Air Mobility Command)のDemand Guru活用例、シスコ社のSupply Chain Guruを使ったネットワーク最適化、南米コロンビアを拠点とする大手化粧品会社BELCORP社の先進的なマイクロアプリ事例をご紹介しました。

アメリカ空軍航空機同軍団は人材や物資の輸送に、保有している軍用機だけでなく安価な商用カーゴも活用しています。近年のeCommerceの爆発的な拡大により、商用機の直前の確保が困難な状況を受け、より事前の予測が必須となっていました。そこで、これまでの時系列ベースでの需要予測ではなく、Demand Guruを採用して様々なデータベースと外的要因を組み合わせて需要に影響を与える因果関係要因を分析。その結果、需要予測精度を向上させ、12か月も前から商用機の手配が可能になりました。(事例)


ゲスト講演: PepsiCo

『 ネットワークデザインによるサプライチェーン戦略および効率性の向上 』
PepsiCo| 二シャント・クマー 氏 

LLamaCon Japan 2019の最後のセッションはPepsiCo ニシャント・クマー氏によるセッションを行っていただきました。

PepsiCoは、ペプシコ、トロピカーナ、クエーカー、ドリトス、チートスなど多数のブランドを持つ、640憶ドル以上の売り上げ(2018年の推定年間塗り上げ高)を誇る200以上の地域にビジネス展開しているグローバル飲食企業です。クマー氏はアジア・中東および北アフリカ地域(AMENA)におけるネットワークデザインの進化を語ってくださいました。

PepsiCo AMENAでは、スナック、飲料品、栄養補助食などのカテゴリを扱っており、45の製造工場、335の施設からなるネットワーク構成を抱える多様性の高い地域です。

PepsiCo でのネットワークデザインは、オペレーションとバリューチェーン戦略のコインの裏表のようなもので、その両方を支えています。具体的には、ソーシング、生産拠点、倉庫、輸送の様々な観点からネットワーク戦略を立てており、ネットワークデザインを通じて、どこで調達するか、何をどこで、どれくらい生産するか、コストを最小限に抑えるにはどうすればよいか、生産能力を備えているか、突発的なイベントでのコスト影響をいかに緩和するかといった戦術的な観点から課題を検討しています。さらに、長期的観点として、いつどこでキャパシティを投資・強化すべきか、閉鎖すべきか、ソーシングを最小化して市場で勝利するにはどうしたらよいか、輸送資産の組み合わせなどもネットワーク戦略に含まれます。

クマー氏は、目標を設定して、LLamasoft Supply Chain GuruおよびData Guruを活用しながらサプライチェーンを徐々に進化させています。最初は、2017年から特定のビジネスユニットの限定的サプライチェーン課題を扱うところから始まりました。その後、2019年からはエンドツーエンド(E2E)アプローチを採用し、原材料の調達から完成品の配送までモデル化。何度も繰り返し可能なモデルを構築し、一度きりでなく高い頻度で活用していらっしゃいます。専属のCOEチームを設立後、数年間でその役割は急速に大きくなり、ネットワークデザインは今やバリューチェーン全体に渡る効率性向上のために必要不可欠なものとなりました。適切なプロセスの構築を通じて、地域全体の総合的サプライチェーン戦略作成に対するプロアクティブなアプローチを可能にしていることが高く評価され、今後もその重要性は続いていくということでした。